用語集

視触診(ししょくしん)

視診や触診は診察でよく行われますが、乳がんの場合にはそれらを一緒に行う視触診が必ず行われます。

これは医師が患者の胸やその周辺を目で見て異常があるかを確認したり、実際に触れてしこりなどの塊があるかどうか、乳頭からの分泌液の有無や質などを確認する診察方法です。

機器を使用した検査の前に必ず行われ、ある程度の大きさの乳がんがある場合にはこの視触診でほぼ確定することができます。
視診は立ったり座ったり、触診は寝ながら行われることが多いです。


浸潤がん

乳がんのパターンのひとつで、乳管や小葉に留まらず、他の細胞組織にもがん細胞が広がっている状態のがんを浸潤がんといいます。
視触診によって確認できる乳がんはこの浸潤がんであるケースが多く、転移しやすいパターンと言えるでしょう。


非浸潤がん

浸潤がんのように他の組織に影響を及ぼしておらず、乳管・小葉でがん細胞が収まっている状態が非浸潤がんです。

浸潤がんと比べても完治しやすいのですが、しこりが外側から確認しにくいため、発見が遅れることが多いと指摘されています。
乳がんの初期状態と考えるといいでしょう。


パジェット病

乳がんの中でも数%しか発症しないという珍しい病気です。
乳頭やその周辺にただれが起こったり湿疹ができるのが主な症状です。
乳頭からの分泌物も症状のひとつ。

これは乳頭にがんが発生することが原因ですが、女性は月経中やその他の要因で類似した症状が出ることもあり、また、乳がんで一般的な症状であるしこりができないため、しばらく放置されることもあります。
高年齢の女性に現れやすい病気。
手術後は再発や移転の可能性はゼロではありませんが、確率は低いでしょう。


腫瘍マーカー

がんが発生している場合、その細胞は特別なタンパク質や酵素を作り出しています。
これを腫瘍マーカーといいます。
このタンパク質や酵素は血液中や尿中に存在していますが、これの量を測ることでがん細胞の存在を確認することができます。

腫瘍マーカーは乳がんがどれだけ進行しているか、逆に治療によってどれだけ消滅したかを確認するために検査によって測られます。

また、治療後に再発したかどうかの確認にも用いられますが、乳がんの早期発見にはさほど寄与しないとも言われています。
つまり、精度がまだまだ低いのが現状なのです。

乳がんの場合は、「CA15-3」、「NCC-ST-439」、「BCA225」などの腫瘍マーカーのチェックが行われます。


マンモグラフィー

X線を利用して乳腺を撮影することにより、乳がんを発見する検査方法。
プラスチックの板で乳房を片方ずつ挟んだ状態でレントゲン撮影を行います。
片方の乳房で2枚撮影するため、合計で4回の撮影を行い、乳がんが存在しないかをチェックします。

手で触った時にわかる程度の大きさの乳がんはもちろん、まだそこまで大きくなっておらず、しこりとして触診で確認できない大きさのものでもマンモグラフィーによって発見されることがあります。

X線を使用した検査のため、妊娠している女性に対しては行われません。
また、年齢が若い女性には避けられる傾向もあります。


超音波検査

エコー検査とも呼ばれる方法で、超音波を乳房に当てることでがんの有無を検査します。

マンモグラフィーのように被曝の恐れがないので、若い女性や妊娠している女性、X線に抵抗を持つ女性に好まれる検査方法です。

乳房内に出来たしこりが良性のものか悪性のものかの判断にも用いられる他、しこりとして確認できる前の小さな乳がんの発見も可能ですが、検査結果の精度に欠けるという欠点があります。
検査に伴う痛みはありません。


エストロゲン

またの名を卵胞ホルモンといい、乳がんを作り出し、乳がん細胞を増殖させるとも言われている女性ホルモンです。
エストロゲンの多くは卵巣で作られますが、副腎皮質においても少量ですが作られています。

エストロゲンの分泌量は月経と関係しており、閉経するとエストロゲンは次第に分泌されなくなります。
また、妊娠している最中は月経がないので、このエストロゲンの量も減少し、乳がんにはなりにくいと言われています。

このため、日本人の乳がん患者が増えた理由のひとつに出産回数が少ないことと、成長の早さにより月経の始まりが早くなったことが挙げられるのです。


内分泌療法

ホルモン療法とも呼ばれ、乳がんができるキッカケになるエストロゲンの分泌を抑えることで乳がん細胞の成長を阻害しようと試みる薬物療法のことです。

比較的副作用が少ないので患者さんの負担にもなりにくいのが利点です。
内分泌療法の多くは手術を行った後に施されます。


化学療法

いわゆる抗がん剤を使用した薬物治療を化学療法といいます。
目的はがん細胞を死滅させることですが、それ以外の細胞にも影響するため、内分泌療法と比較して副作用が多いのがデメリットです。
副作用としては吐き気や抜け毛などが挙げられます。


使用する抗がん剤の種類によっては月経がなくなり、妊娠・出産できなくなる可能性もあるので、化学療法を行う時には一層の注意が必要です。


穿刺吸引細胞診

マンモグラフィーなどを使用して検査をし乳がんの可能性があると診断された時に、その乳がんと思われる箇所の体液や細胞を細い針を使って取り出し精密な検査を行う方法を「穿刺吸引細胞診」といいます。

注射器のような道具を使い細胞を吸引していくので、特に麻酔などはせずに行われるのが一般的。
多少痛みはありますが、我慢できないほどではないでしょう。

細胞を調べることで乳がんかどうか、あるいはそれが良性なのか悪性なのかを判別することができます。


乳房温存手術

乳がんに対して行われる手術のうち、乳房を全て切除するのではなく、一部分を残して乳がんだけを取り除く手術方法のこと。

乳房の一部を残すことで肉体的・精神的ダメージを減らすことができる点がメリットとされる一方、乳がんの再発の可能性を残すことがデメリットだと言われます。

以前は乳がんのレベルにあまり関係なく乳房切除手術が行われていましたが、今では初期の乳がんであれば積極的に乳房温存手術を行う病院・医師が増えてきています。

この手術方法を行った場合にはその後、放射線治療を行わなければならないことも知っておきましょう。


乳房再建手術

手術によって取り除いた乳房を自分の背中やお腹の脂肪・筋肉などを使用して、できるだけ元の状態に近い膨らみを持たせる手術を指します。


乳房だけではなく乳輪や乳頭を手術によって失った場合、それらの形を再び作り上げるのもこの乳房温存手術に含まれます。

乳房温存手術には自分の身体の一部を使う手術法とは別に、生理食塩水バッグなどが使われる方法もあります。
この手術は乳がんの摘出手術と同時に行われるものと後日行われるものがありますが、美しさを目指す場合には後者の方が有利だと言われます。


乳房扇状切除手術

乳房温存手術のひとつ。
その名の通り扇状に乳がんのある部分を含みつつ切除していく手術方法です。
比較的広い範囲の乳腺組織を切除していくので、温存手術とはいっても手術後の乳房の形が崩れる可能性があります。

ただ、乳がんを取りこぼす可能性が低いのがメリットと言われます。

乳房の形が崩れたとしても再建手術によって違和感が出ないようにすることはできますが、乳房が元々大きくない女性にはあまり選択されない手術法かもしれません。


乳頭分泌物細胞診

乳がんになるとしばしば乳頭から分泌液(分泌物)が出てくることがあります。
この場合にはその液体を顕微鏡で検査をし、乳がんかどうかを判断する検査方法が用いられますが、これを「乳頭分泌物細胞診」といいます。
ただ単に分泌物細胞診や塗沫細胞診いう呼ばれ方もします。

分泌液を取り出すために多少乳房を絞ることはあるかもしれませんが、針を使用したりマンモグラフィーのように強く挟むなどはしないので、検査時に痛みを感じることはありません。


乳頭腺管がん

乳がんの種類のひとつで、乳がんになる人の2割から3割弱程度の人がこのタイプだと言われています。
丸い形(乳頭のようともキノコのようとも例えられます)にがん細胞が発達していき増殖していくのがひとつの特徴で、管腔形成と呼ばれる、がん細胞の集合体が中に空洞を形成するのもこの乳頭腺管がんの特性のひとつです。

細胞の壊死が確認できることもありますが、通常は健康な細胞に近く、悪性のレベルは低いとされます。
つまり、治療後の経過もよく、完治しやすい種類の乳がんと言えるでしょう。


充実腺管がん

がん細胞が腺管の内側から外側へと圧迫しつつ押し広げる感じで増殖していくのが特徴のがんです。
浸潤がんのひとつですが、周囲の健康な細胞との見極めがしやすいのも特徴のひとつ。
乳がん全体のだいたい2割くらいがこの充実腺管がんだと言われています。
悪性度で言うと乳頭腺管がんよりは強いと言われていますが、乳がんの中では中程度と位置づけられるでしょう。


硬がん

乳管の周りに点在的に増殖するがんが「硬がん」です。
このため、血液やリンパ流にのりやすく、他のタイプの乳がんと比較しても転移が早く多いと言われています。
乳がんになる女性の4割を硬がんが占め、乳がんの中でも悪性が強いのもこのタイプの特徴です。

ただ、生存率への関連は硬がんかどうかよりも、リンパ節にがん細胞が発生しているか否かの方が強いとする見解もあります。
硬がんかどうかは初期検査で推定できることもありますが、細胞を調べ確定する必要があるでしょう。


炎症性乳がん

炎症性乳がんは少し特殊な乳がんで、乳房が赤く、あるいは濃い橙色に腫れ上がる症状を持っています。
オーソドックスな乳がんと異なりしこりができないことが多いです。
どこか特定の場所にできるというよりも、広範囲に渡ってがん細胞が増殖します。
乳がん全体の数%程度しか発生しないと言われています。


えくぼ症状

乳がんと思われるしこりが乳房内に存在していると、そのしこりの周りを手で抑えたり、腕を上げて胸を張る動作をした時に、そのしこり部分がへこむことがあります。
えくぼのようなへこみ方をするので、これを「えくぼ症状」と呼ぶことがあります。

乳がんの自己診断にもこのえくぼ症状の有無がひとつの基準として用いられますが、注意したいのは、乳がんがあれば必ずそこにえくぼ症状が出るというわけではないこと。
しこりが小さい、あるいはしこりができない乳がんの場合にはへこみが現れないことも多々あるので、この症状だけで判断するのは避けましょう。

また、えくぼ症状が出た時にはそれなりに乳がんが大きくなった時とも考えられます。


悪性度

悪性度とは、その乳がんがどれだけ人体に与える影響が大きいかを示すものです。
がん細胞の増殖スピード、転移のスピードやしやすさ、再発の可能性によってこの悪性度が示されます。

他のがんにもこの悪性度が示されますが、乳がんの場合には特定のがん遺伝子、もしくはがん細胞を抑制する特定の遺伝子、抗がん剤の効き目の薄さなどを考慮して悪性度が出されることが多いです。

乳がんの悪性度は「グレード1」や「グレード3」などの数字で表されることがあり、数字が小さいほど悪性度は低くなります。
悪性度が低いほど治療がしやすいのが一般的です。


セカンドオピニオン

乳がんの診察を受けている主治医だけではなく、他の病院や医師にもどのような治療があるのかや手術の方法などを聞くことを「セカンドオピニオン」といいます。

主治医の言っていることに納得ができ、それ以上の最善の治療法等はないと判断できれば必要ありませんが、そうではない時には主治医に他の病院や医師を紹介してもらいセカンドオピニオンを受けることができます。

乳がんは特に女性が乳房を失う可能性がある病気であり、また、医師の考えによって治療法や手術方法も大きく変わることから、セカンドオピニオンを受けた方がいいと言われています。


再発

治療が終わった後に再び同じ病気や関連した病気が起こることを指します。
乳がんは再発する可能性を持つ病気であり、外科的手術をしてもがん細胞を取り残してしまっていたり、乳がんになりやすい遺伝子を持っている女性は再発する可能性が高いと言われています。

また、乳房以外の組織にがん組織が転移している場合にも乳がんとの関連性が認められれば再発と表現されます。


家族性乳がん

乳がんは遺伝することが指摘されており、実際に研究で乳がんになりやすい遺伝子が解明されており、この遺伝子血縁関係者に引き継がれることで、そうではない人と比較して乳がんを発症しやすいことがわかっています。

この遺伝子を持っている人で、親、姉妹、子供の中で3人以上で乳がんを発症した、もしくは2人だけの発症であっても、その内のどちらか1人が若い時(40歳未満)で発症した、あるいは左右どちらの乳房にも同時に、もしくは時期は異なるが左右両方に乳がんが発症した、または、乳房だけではなく他の臓器にもがんが発症したなどの中で、どれかに当てはまるケースは家族性乳がんであると判断されます。

乳がんになる可能性が高い遺伝子を持っているかどうかは遺伝子検査によって知ることが可能です。


石灰化

乳がんを発症したことによってそこに十分な栄養が送り届けられなくなり細胞が壊死すると、その部分にカルシウムが沈着します。
これを「石灰化」といいます。
マンモグラフィーを使用して検査をするとこの石灰化した部分が白く残るので、それによって乳がんを疑われる場合があります。

しかし石灰化していることが乳がんであることに直結するわけではありません。
乳管から分泌された物質が固まるとそこにカルシウムが溜まり、それが乳がんの場合と同様の石灰化を起こすからです。

マンモグラフィー検査で石灰化が認められると、より精密な検査を行い、乳がんかどうかの判定が必要になります。


転移

がん細胞が乳房以外の場所に移ることを「転移」といいます。
がん細胞はリンパや血液に運ばれて体中を巡ることがあり、それによって他臓器へ転移していきます。

リンパ節に転移することを「リンパ節転移」、乳がんで転移しやすいと言われている肺や胸膜、肝臓、脳、骨などに転移することを、乳房よりも離れた部位に転移することから「遠隔転移」と表現することがあります。
また、転移したがん細胞はそこでも増殖を続けます。


リスク因子

リスク因子とは、どんな人が乳がんを発症しやすいかというデータを元に考えられている、乳がん発症の要因のことです。
リスクファクターとも表現され、これに当てはまる人はあてはまらない人よりも乳がんになりやすいと言われています。

例えば年齢が40歳以上の女性、30歳以上で未婚の女性の中で未だ出産を経験していない女性、初産が30歳を越えている女性、閉経が55歳以上の女性、50歳以上の女性で肥満である、乳腺の病気経験がある、家族の中で2人以上乳がんを経験した人がいる女性など。


予後因子

乳がんの治療を行った後、患者の症状や体調などがどのように経過していくのかを考えるための要素が「予後因子」です。
これを考慮しながら乳がんをどう治療していくのかを検討・判断していきます。

予後因子には例えばしこりの大きさや、リンパ節へがん細胞が移っていないか、その他の臓器への転移はないか、ホルモンレセプターがあるかどうか、患者が閉経しているかどうか、乳がんの悪性度についてはどうか、などがあります。

この中で予後因子として最重要視しなければならないのは、リンパ節へ転移していないかと他の臓器への転移はないかです。
これらが認められると生存率が下がるため、治療方法の選択に最も影響があると考えられます。


ホルモンレセプター

レセプターは受容体と訳されます。
つまり、「ホルモンレセプター」とは、ホルモンの受容体を指す言葉。
細胞には体内から分泌されるホルモンを受け取る部分があるのですが、これがホルモンレセプターです。

このホルモンレセプターは乳がん細胞の中にも存在しており、ここで特定の女性ホルモンを受け取り反応すると乳がん細胞が活発化し増殖することになります。

多くの種類があるホルモンレセプターの中で乳がんと関連するのはエストロゲンレセプターとプロゲステロンレセプターであり、これらのホルモンレセプターの割合などを調べることでどのような乳がん治療を行うかを判断していきます。

もしホルモンレセプターが多くあればホルモン療法が選択されるのが一般的であり、もし存在していなければ抗がん剤で治療することになるでしょう。


病期分類

がんはしばしば「ステージ」という言葉でその進行具合が表現されますが、これが「病期分類」と呼ばれるものです。

乳がんにも病期分類が存在し、がん(しこり)がどれだけの大きさになっているかや、転移の有無・場所などによって「病期(ステージ)0」から「病期(ステージ)4」までに分類されています。

例えば浸潤がんに至っていない乳がん(非浸潤がん)やパジェット病に関しては事態がそこまで深刻ではないため、「病期0」に分類されます。

また、「病期2」と「病期3」については更に細かく分類され、「病期2A」や「病期3B」などと表現されます。
しこりが2cm大を越えると「病期2A」に突入し、「病期4」になると、他の臓器などに転移していることを示しています。

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